これまで歯周病は、単に口の中だけの病気としてとらえられていました。ところが「歯周病を放置すれば様々な全身疾患を進行させ、生命に影響をあたえる」 ことが、アメリカの大々的な疫学調査で明らかにされました。

歯肉も体の1部です。血管によって、全身とつながっているので、歯周病菌やその毒素が血液にのって全身へ広がり、結果的に全身疾患を進行させてしまいます。

特に注目されているものに、誤飲性肺炎、心臓血管系疾患、糖尿病、早産・未熟児などがあります。

誤飲性肺炎

高齢者は反射が衰えているため、食べ物が誤って気管にはいることがあります。その時に、口腔内細菌も一緒に入りこみ、細菌性肺炎
を起こすことがあります。肺炎は直接的な死因の第1位です。十分な注意がひつようです。舌苔の除去、歯磨きをおこなって細菌の量を減らすだけでかなりのリスクがさげられると考えられます。

重度歯周病患者のプラークのなかから肺炎の原因菌が高い確率で検出されたこと、口腔清掃が不良であると、原因菌が生息しやすいことが明らかにされています。

動脈硬化への影響

最近のアメリカの疫学調査によって歯周病のある人ほど動脈硬化による心臓疾患がおおくなる事があきらかになりました。動脈硬化をおこした場所に歯周病細菌の存在が報告されたり、またその細菌によって粥状硬化が形成されやすいこともわかってきました。そのメカニズムは歯周病菌の毒素や免疫細胞のだす物質が、血管そのものを、変性させたり、血小板に働きかけ血栓を作りやすくするためとかんがえられています。

細菌性心内膜炎

歯周病に罹患していると、口腔内の細菌が血流にのって飛散しそれらが主要な臓器に入り込み新たな感染が進行することがあります。
心臓の弁膜や心内膜に障害がある人では、細菌がその部分にへばりつき細菌性心内膜炎がおきやすくなります。

糖尿病への影響

中程度~重症の歯周病に罹患していると血糖値のコントロールに影響がでます。歯周病菌と免疫細胞との戦いのなかTNF-αという物質が放出されます。これが血中の糖の取り込みを阻害し、結果的に血糖値がさがりにくくなります。
2011年、IWAMOTOらは、中程度以上の歯周病を治療することによって血糖値のコントロールが改善されたことを報告している。

早期出産低体重児(37週未満、2500g未満)

細菌の毒素の影響でマクロファージからTNF-αが放出されると、これが胎盤を通過し、胎児の成長に影響をあたえます。さらにそのなかでも、プロスタグランディンE2は子宮を収縮させ早産に至りやすくなるといわれています。
健康妊婦にくらべて歯周病罹患妊婦は早産のリスクが7.5倍になることが2011年Jeffcoatらによって報告されています。 

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